「IT化することによって、「業務日報」は5つの進化を遂げることになります。
その一つ目は、「行動管理の側面」です。これは「業務日報」の基礎的な役割です。部下が、いつ、どこで、誰と、何の目的でコンタクトをとったのか、そして、そこでどういう話が行われたのか。社員の「ハタラキ」を管理する側面です。この「行動管理」の側面で考えなければならないのは、「コンタクトチャネルのマルチ化」という事態です。現在は「訪問」だけが、コンタクトチャネルではなくなっています。電話やメール、テレビ会議やWebなどのコミニケーション環境の変化が、様々な「コンタクトの形」を生み出しています。外出訪問の管理だけをしていたのでは、「コンタクトの全貌」が見えなくなってしまうのです。たとえメールによるやり取りであっても、最終的に一つの取引を成立させる交渉のプロセスとして、記録すべきものは記録し、また、それを重要な「業務」として認めていくことが大切です。メールでのやり取りを「仕事」として認めない風土は、改めるべきです。



もうひとつ重要なことは、社員の「ハタラキ」を管理するだけではなく、経営層の「ハタラキ」を公開することの重要性です。忙しい経営層に「業務日報」を書いている暇はない、と考えてはいけません。経営層こそ「業務日報」を記述することで、自分の仕事を相対化したり客観視したりできますし、なにより社員層との仕事の連携が、スムーズにいくものです。
「 業務日報」はIT化によって、「行動管理の公開性が高まる」と言えます。

二つ目は、「コミニケーションの側面」です。
「業務日報」によって、部下から上司、上司から部下へと双方向のやり取りが、遅滞なくタイムリーに行われるようになります。IT化によって「業務日報」が作成されれば、メールなどの手段で自動的に上司に届くようになるからです。携帯メールへの自動配信ができれば、上司はいつどこにいても、部下の「業務日報」を確認することができます。ここで重要なのは、上司が形式的なコメントを返すのではなくて、共に考え、部下を指導する場として、「業務日報」を活用する姿勢です。双方向のやり取りが継続的に行われるようになると、社内のコミニケーションはよくなります。上司は、単に部下の行動管理を行うだけではなく、部下の育成を考え、アドバイスやフィードバックを行うようになるからです。




三つ目は、「計画管理の側面」です。紙の「業務日報」が主流の時代には、あまり考慮されなかった側面かもしれませんが、「次にどう行動するのか」という計画を自ら設定することが、重要になっています。その日どんなコンタクトがあって、どういう内容だったのかを単に「結果」として報告するだけではなく、次のアクションを「期限を切って」自ら設定することを、必ず義務付けて行くことで、全ての仕事を計画的に進めていく風土が、生まれてきます。「次にどう行動するのか」という内容に対して、上司がアドバイスをすることで、上司と部下が同じ土俵で、仕事を進めていくことになります。紙からITに「業務日報」を進化させる大変大きな効果が、ここにあると言えます。
担当者はその日の報告はしても、なかなか次回の予定を記入しないものです。これを放置してしまうと、その組織では「結果管理」が定着してしまい、明日どうするのか、次週どうするのか、来月どうするのかという「先行管理」の風土が、育たなくなってしまいます。特に営業部門では、「御用聞き営業」しかやっていない担当者は、次回の予定を記入しないものです。


四つ目は、「コラボレーションの側面」です。「次にどう行動するのか」を「業務日報」に記載をするときに、もうひとつ大切なことがあります。どのような仕事であれ、完全に「個人」で完結していることは極めて稀です。次に何かのアクションをするためには、社内の他のメンバーの協力が必要なケースが大半です。「次にどう行動するのか」を期限を切って設定する際に、社内で協力を必要とする人を「関与者」として記入をしていくことで、組織のコミニケーションに横糸が生まれます。
また、上司のコメントとは別に組織の他のメンバーが、コメントを行うことができる「コラボレーション・コメント」を記入するようにすれば、横糸にも双方向のコミニケーションが生まれます。




そして最後に、五つ目が、「ストックの側面」です。「業務日報」のやり取りは、組織の「神経網」を形作ることになります。タイムリーに双方向なコミニケーションが、日々行われるのですが、これはいわば「フローの側面」です。紙の「業務日報」の大きな役割はこの「フローの側面」でしたが、IT化することで、すべての「業務日報」は蓄積され、後からいろんな方法で活用することができるようになるのです。




特定の取引先に関する「コンタクトの履歴」を確認したり、「期限の迫った次の行動」をリストアップしたり、自分が関与者と指定されているビジネスを確認したり、といった様々な活用が可能になるのです。このような「ストックの側面」こそが、「ナレッジマネジメント」の起点となるのです。

「業務日報」のIT化によって、この5つのステップを踏んで行けば、組織には縦横に神経網が発達し、そして、ストックを活用することで、いわば「脳」が生まれてくることになるのです。

(次回は、サイボウズ社のWebデータベースである「デヂエ」で、簡単に構築できるIT業務日報の事例について書きます。)

第3回 業務日報IT化の意義
第2回 業務日報IT化の課題
第1回 情報の共有について
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